いつぞやご紹介を、と申し上げてから気がつけば3ヶ月ばかり経過しておりました。例年通り穏やかな気候と陽光に満ちた5月は、集中力を切らすと寝てしまいそうな危ない店内でございます。錯綜する情報やら世の中の目まぐるしいスピード感やら、あるいはどうだってよいニュースの一例から脱し、ニュートラルスイッチを限りなくONにするには絶好のタイミングでありまして、そのようにして効きが良くない冷房の風で涼みながら前方4面の窓から覗くバージニアクリーパーの緑緑を視界に捉えますと「緑に映える1本の赤」という状況に出くわすわけであります。とはいっても前々からその状況というのは代わり映えもなく其の状況なわけでありますが、中立的思考を前提に夕方17:00の時刻を知らせる街の音楽が鳴り出す頃合い、そのタイミング、5月の陽光、穏やかな気候、控えめな夕日、緑に映える1本の赤、ニュートラルスイッチはオン、美味いパンケーキレシピと同じようにそれらの要素が欠陥なく混在し成立する瞬間というのは、夢と現実を隔てる線引きがなくなり、あるいは何かの取り違いでパラレルワールドに存在してしまったような不可思議な感覚に思えてくるもの。要するに、寝てしまいそうな危ない店内なわけでありまして、集中力を決して切らさぬ日々という事でして、何よりくだらない独り言でございます。失敬。

いつぞやご紹介を、と申し上げてから気がつけば3ヶ月ばかり経過しておりました。今シーズン設けたテーマを象徴する素晴らしき実例で御座います。1900年初頭に創業したイタリアはミラノをメインフィールドとした同社の起源を辿りますと生地メーカーという内容が顔を出します。後にそのフィールドは世界へ拡散。おそらくスーツをビスポーク(もしくはイージーオーダー)されたご経験のある方はファブリックメーカーという其の顔には馴染みのある内容であろうと思います。70年代直前にはプレタポルテにも参入し、パターンオーダーにも心血を注ぐ。現在ではコレクションネームとしても周知に至っております。とまぁ歴史の陳列などわたくしが偉そうに綴る内容ではありませんが、少なくとも本作に関して申し上げねばならないのが、“ 素晴らしい生地 ” という引き続き同社渾身の採択と、テーラーを土俵としながらプレタの世界で魅せた“ スポーツジャケット ” であるという実相。


厳格な基準値を通過したように採択された美しい生地は、天然リネンのような軽やかさとテクスチャーが保存されながらも全体を占有するのはコットンである事実。時間を吸収したようなミリタリーカーキに効果的に配色されたグレイ。這わせる新緑、映える赤。ハンドウォームに並列して設置されたチェストポケット。品の良い前立て。アーム設計が成す緻密な空間支配、身体に沿わせた際に発動する固有の規律や立体美。その造形の色気こそ、パターンへの追求と考証が際限なく行われている同社のプライドの顕れであり、テーラーという世界の外においてその品位が保たれた素晴らしき実例のように思います。


80s Ermenegildo Zegna cotton sport jacket
SURR by LAILA 小林
03-5468-5966
[email protected]

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Newarrival 80s Yves Saint Laurent light weight trench coat


Newarrival 90s Levis number505 deep indigo blue & center crease





Newarrival 50s Swedish military art painted oversized pullover


Newarrival 80s C.P company by Massimo Osti military approach cotton T-shirt


Newarrival 80s Issey Miyake “ Plantation ” double breasted coat & lapel less tailored jacket



兼ねてよりエントリーを続けている同社の作品中、幸運にも最古の年代を更新することが叶いました。決して穏やかではなかった時代、富裕層の紳士によって丁重に誂えられた事実と相反するように保存された濃密な静謐、顔立ち、圧倒性。合計5つのコンパートメント。3つ折りという特異点。仏的美色と歴史深いボルドーブラウン。驚異的な革質。2度と出土はしない個体。しかしながら、しかしながらも歴史的産物という極稀有性が内包されながら強烈なリアリティと簡潔力と完結力を備えた素晴らしき個体であるという事実もまたお伝えをしなければならない情報であると同時に、これもまた弊店におけるひとつのモットー、あるいは暗黙の規律、もしくは冴えない店長の独り言でありますが、肌馴染みが良く、使い勝手が宜しい無垢な “ 道具 ” であるかどうか、御賢察と御潜考の程を頂けましたら何よりに思います。







Newarrival 30s Hermes multi way clutch bag
SURR by LAILA 小林
03-5468-5966
[email protected]
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わたくし自身、この素材がどのような特性を持ち、どのような働きを魅せ、どのように時間と共存していくか、いささか勉強不足なものでざっくりとした輪郭や未来の実相を描けぬまま、あるいは到達点というものがあるならば、そこまでの直線ルートは愚か、アウトラインさえ引くこともできない、まるで留意の散在であります。勉強不足というより、経験不足という表現がおおかた正しいのかもしれません。どのような性質を保ち、どのような種類の皺を刻み、どのように呼吸をするものか、着用し、生活を共にしなければ存在そのものの本質は決して視えてこないという種類の経験不足。圧倒的に足りないのです。ピッグスキンという極上特異点。

それがピッグスキンの防具を纏った3rd typeの正統的実体だとしましたら尚更。歴史的所産の再解釈というひとつの行いは「素材」ひとつでここまで変則的に深化するものかと感興を抱くと同時に、茫然自失な心境もまた正直でありまして、ピッグスキンで3rdを構築するなんて一体どこの変質者が試みたのかと思うわけであります。仏の80年代後期、革を極専門的に操るひとつのマニアックネームが仕掛けたという事実を知るまでは。
そしてミラノコレクション某社の絶大な色気を保存させる方式とはまるで異なるように、ファッショナブルかつ美的感覚を淀みなく与え、固有の空気を保存させた見事なまでの空間演出、求心力のある大きさこそ極めて特異的であると認めるに充分な要素であり、同社の作品であれなかれ、次はないと完結的な姿勢すら感じる、やはり猛烈に特異的な存在であるように思います。鉛筆で線を引いたように荒々しくも的確な縫製、行き過ぎてしまった運針やら構築的要素やら、もしくは創業初期頃の年代であることから同社が発信する名作(を生むための)プロトタイプであろう印象も拭えず。
というわけで、可愛くてたまらないのです。





late80s France Chevignon pigskin leather jacket 3rd style
SURR by LAILA 小林
03-5468-5966
[email protected]
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