Aの時代Bの時代理論 / Diary1437
11.9.2026

店頭で御挨拶させて頂いた方々は御存知の通り少し前よりSURRに弊社新人が研修で滞在しているのですが、その際は優しく御話してくださり誠にありがとうございました。彼や彼女にとって何よりも良き経験になりました。

そのような時にはこれまでに会社が取り組んできたことなどを振り返って案内するのですがその過程でおのずとSURRに関しても振り返ることがほとんどで、“そういえばこの考えを言葉にするの久しぶりだな”みたいなことが多々あると自分の中で既に何周もしたことを改めて考えさせられたりして、それが今だとまた違った角度の気付きや閃きがあったりして研修を受けてもらっているスタッフよりも私が有意義な気分になったりします。“どうすればこの服の良さを相手に伝えられるか?” これってなかなかどうして改めて思い浮かべられることではありませんし、一番最初の論点であり最後に辿り着く論点なので五年経とうが十年経とうが二十年経とうがしっかりと考えることができる、そしてその議論を私は楽しいと思える。ちなみに研修そのものは私はだいぶと思い悩見ます、教えてもらっていないことを教えるのは極めて難解です。

 

なのでここ半月くらいで改めてSURRの設立当初に掲げていた考えなどを説明する機会が何度かありまして、それは時々店頭で御客様型に問うて頂く時の受け答えよりも必然的に細かく深くなるので度々“そういえばそうだったなぁ”とぼんやり思っていたのですが、その一つが例えば50年代のクラッシックなコートとそれに近しい70年代のデザイナーズコートを横並びにしてどちらが好きか選んでもらいたい という考え方。男性のためのファッションカルチャーは横の広がりが乏しい替わりに縦の繋がりが太いため時代が変わっても似たようなプロダクトが製作され続ける傾向にあり、例えばAの時代だとモードやハイファッションではない古典的な紳士服でBの時代だとAを御手本にしたデザイナーによるモードアプローチの一着で、どちらも異なる良さが同じくらい在って根幹では繋がっているからこそ今の時代の今の目線でどちらが好きか自分で判断して欲しい、そしてそれはどちらを選んでも100%正解だ。更に言えばAとBの時代を踏まえた上でそれと連なった今の服を選んでも良い という考え方を最近研修スタッフに改めて言葉にして伝えて、そういえばこういう話久しぶりにしたなぁって、多分最初の頃のDiaryにも何度か書いているだろうなぁって。まぁ自分でDiary見返すこと一切無いから定かではないけれど、多分書いているはず。

だから私も自分の服選びとかその日に何着るかって時にAの時代Bの時代理論は考えるんですよ、もはや自動的に。言うまでもなくAもBも等しく好きだし尊敬しているし、更にはAとBも踏まえた今の(近年の)服,Cも存在するわけですが、意識するのは全身Aにならないこと/Bにならないこと/Cにならないことでして、それは上下同世界観でまとめるのを好まないのとまぁ同じ気分です。あと基本的にコーディネートが考えずに着たい服を着たいように組み合わせるのですが、まず何を着たいかのメインを思い浮かべた時にそれがAなのかBなのかCなのかである程度それ以外が決まっていきます。

それでですね、基本的にずっとBとたまにCがメインだったのですが、ここ一年ちょっとくらいでしょうか、Aがメインになることが多いんですよ。BとCは基本的にデザイナーズプロダクトなのですが、Aは何かというとデザイナーが御手本にする時代や文化のプロダクトでして、いわゆるオリジンのカルチャーになるわけです。

 

 

オリジンとなるとやはり時代もだいぶと遡りますからすべからく特有の濃度が高まりまして、それは時に上質なシックさに時に特有の土臭さに時に圧倒的なプロダクトデザイン感に変換され、それはどのような器が身に付けるかによっても効能が変わります。いずれも素敵ではあるのですが効能はしっかりと把握して活用することに最大の意義がありますので、その使い方と使いどころは極めて重要です。さて、今回の話では私が自分が関わる服ではなく自分が着る服としてオリジンの気分が高まっているということはそのシックさや土臭さに興味を抱いているということになるのだろうか?だいぶと長い期間デザイナーズカルチャーがメインで自分なりにしっかりとだいぶと楽しんできたうえで、よりヴィンテージとしての定番性と“らしさ”が色濃いオリジンに惹かれているということか?私の感覚的な捉え方でそれは“戻っている”ことなのですが、それと同時になんとなく今の自分の気分は必然でもあるように思っています。

だから先日のハンティングジャケットもこのレザーコートも例年以上に惹かれます。元々心から好きだし尊敬していたけれど、気分だからもっともっと。数年連続で御提案が叶っているフレンチワークにおける政府関連企業用最上質レザープロダクトシリーズですが名門アドルフ・ラフォン社製は存在の認識そのものが初めて、楽しい楽しいこんなんあったんだシリーズです。アドルフ・ラフォンだからと行って決定的に徹底的にここが違うといった仰々しいアイキャッチはなく大筋はFrench Goverment Workerシリーズと同じくですが、革質,それ以外の素材性,立体構築,縫製,哲学などプロダクトの品質における全ての側面においてポジティヴな要素性しかありませんでして、事実シリーズとは袖のライニングとポケット内側の素材が決定的に異なり従来は化繊的な屈強なテクスチャーに対しこちらはコットンを基調としたよりクラシックで滑らかな素材感になります。

 

 

 

 

 

New 50s French Government Worker leather half coat by Adolphe Lafont

 

フィッティングもどこかドレスコートを思わせる肩の吸い付きで、ガバッと羽織る防寒着らしいノリがほとんどだった中でこちらは独特の凛々しさがあります。でも決して細身だとか小さい感じではありません、なんというか凛としているんです。それもきっと名門だからこその矜持かと。

あと過去に扱ったFrench Government Workerレザープロダクトを全て見返したのですが厳密に同じデザインの個体はありませんでした。セットインスリーブ、両サイドポケットのみ、フロントボタン仕様、フラットカフス、胸部の切り替え、ハーフコートのバランス。これらの条件が揃ったのはこの一着のみでした。

 

 

SURR 福留

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