Travel coat / Diary1170
17.11.2023

弱冠27歳で個人活動を開始し28歳となる1960年に自身の名を冠したブランドを始動させるValentino Garavani氏。言わずもがなイタリアンモードの最古参であり初めてフランスのプレタポルテ・ランウェイで認められたイタリアンデザイナーとして服飾史における重要人物の一人である氏のヴィンテージクリエイションには様々な側面があってユニーク,インテリジェンス,パワフル,クレイジーetc.といつも楽しい刺激ばかりでしたし、それこそモードカルチャーにおける初めてのジーンズを手掛けた第一人者らしいカジュアルやスポーツの解釈はこれまでもこれからも楽しい存在で在り続けますが、Uomoのメインクリエイション/ファーストラインはクラッシックが特に太い軸足になることが多く、それに注がれるヴァレンティノらしいスパイスや色香,それこそ上の写真のような(1967年、この時で35歳)時代を越える不変的なエロティシズムとダンディズムの個性が堪らない世界観ですが、歴代様々出逢ってきた中で御提案してきた中でここまでモダンなクリエイションに出逢うことはついぞありませんでした。

 

 

 

 

そういった意味ではヴィンテージ・ヴァレンティノにおいてイレギュラーな存在なのかもしれませんが、実物を目の前にするときっと良い意味でヴィンテージ・ヴァレンティノらしいクラッシック感とクラッシックに相応しい適切な重厚感をイメージするくらいパッと見のムードは王道ですが、いったい何が非王道,ここで言うところのイレギュラーを誘発しているかと言うと“軽さを追求した構築”にあります。

 

 

 

THEメンズコート感溢れるウールのテクスチャーにネイビーのカラーリングのクラッシックな重厚感要素が揃っていながらハーフライニングかつ身体への負荷を軽減したオーヴァーサイズ設計という個性。そう、こちらは旅での持ち運びを想定し小さく畳んで持ち運べるようにと構築された通称トラベルコートというプロダクトなのです。近年においてそれらはテクニカルな素材やカジュアルなスタイル性で提案されることが度々あるのに対してこちらは徹底的なダンディズムかつクラッシック。それを正々堂々と様々な角度の感性と職人技術によって軽量化するそのプロセスはまさにモードカルチャーの正攻法でして、モードの正攻法はいつの時代もモダンの最高峰ですからこちらから醸し出されるスタイル性はそれこそアチラさんやソチラさんといった今のモードを牽引するデザイナーズブランドの世界観と適切にリンク。言ってしまえばこちらは“ヴィンテージ・ヴァレンティノです”と言われるより“The R〇wです”と言われた方がしっくりくるというものです。

 

 

 

 

 

 

New arrival,80s Valentino Garavani hail lining pure virgin wool oversized travel coat.

 

メンズクリエイションにおいてこの世界観,バランス,スタイル性のリアルデザイナーズヴィンテージには出逢えません。それこそモードの本粋であるレディースのクリエイションであれば出逢える可能性は高いですが、そうなるとクラッシック要素が減ってしまいまた一味も二味も異なりますし言うまでもなく女性の身体のための構築です。逆に現代のアチラさんやソチラさんだったら近しい世界観出逢えることでしょう、そっちの方がよっぽど現実的だし効率的,それこそタイムパフォーマンスですね。なので私はこの世界観はこの一着で忘れようと思います。

 

 

SURR 福留

 

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