呼吸する碧 / Diary416
5.7.2017

 
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「呼吸する碧」
 
端から端までとカラーチャートに属する青色を確認致しましたが、 “ 青 ” と限定な上での探索で御座いましたので、当然、近しい色合いは存在したものの、確実性を帯びた色名に辿り着くことは叶いませんでした。
何処にも属さない碧。広域的な表現で “ 青 ” ですが、感覚的に(なんとも説得性に欠けますが) “ 碧 ” と表したくなる程、極めて日本的で,奥床しく,情緒すら有ると。どこか無機的に感じられない表情は、夕暮れを過ぎた水上,海面,深海のように緩やかな水の動きを連想できる、その色を乗せた生地は、合理的に無機的で終わるにはあまりにも勿体がなく、それでいて反発したくなる程に優美。詰まるところ、有機性を帯びた表情「呼吸する碧」で御座いましょう。
 
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シャツかブラウスか、大きいか、小さいか。恐らくか、其の領域ではない例えばの1着だろうと感じますが、適合する表現のひとつは「羽織り」。肩幅、身幅とジャストフィットで着用する事を想定して仕立ててはいないと推定できる程、余白を残したパターンと空間の使い方。ドロップショルダーという仕組み、フレンチアンティークにみられる大きめのチェストポケット。背は1枚仕立て、ヨークを排除するという選択。
 
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ともあれ、無機性を感じないその碧は、和を放ち、自然に溶け込み、主に添う。狙った芸当と思いますが、オーソドックスではなく、かといってアバンギャルドでもない、その狭間に存在する絶妙な均衡。前衛的か、官能的か、古典的か。其々のエレメントが複合的に重なる中間地点に、堂々と自立する1着。袖を通した際に確実性を帯びて伝わってくるエッセンス。
“ 大胆な空間バランス ” “ アダルトな色気 ” “ 無駄を削ぎ落とした上での構築性 ”
彼が手をかけた衣類を視ますと、こうすればこう、というロジックや論理など実は存在せず、存在したとて頭脳や経験則では包容できない際に、砦として君臨する人知が及ばない領域、圧倒的なまでの“センス”によってコントロールしていたのではと、思う程に、所謂イメージソースやガイドとなった “教科書” が思い当たらないし見当たらないし浮かばない。
兎も角も、彼の頭の中でしか成立しない別次元の世界であり、それが具現化された1980年代というプレタポルテ全盛の時代。彼が哀しい事件の末,命を絶たれるまで全盛期と詠われたその時代の1着は、写真を愛し、ファッションを近くで触れる事ができた幼少時代、大国イタリという地、誇大して申し上げるわけではなく、彼の逸脱なる其のセンスが凝縮された,感服する程に素晴らしい既成衣類であると、私はそう想います。
 
「呼吸する碧」であるかないか。あったとしたら。そうでないとしたら。
例えばこの1着は、和を放ち,自然に溶け込み,主に添う。極めて日本的で,奥床しく,情緒すら有る。夕暮れ過ぎの水上,海面,深海のように緩やかな水の動きを連想できる程、無機性に反発したくなる程に優美。其れ程に魅力的かつ「呼吸をする碧」であるからこそ、感服する程に素晴らしい既成衣類であると、そして1着の紳士服としまして敬畏の意を表したいと、切に想います。
 
 
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80s Gianni Versace blue cape shirt
 

 

 

SURR by LAILA 小林

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