捉えきれない色味とフォルム / Diary241
20.3.2016

SDIM2246

昨シーズンに ” 際どさ ” というお題目で一着のメゾン・コートを御紹介させて頂きましたが、先日の旅でそのスプリング Ver ともいえる系譜を継いだ一着と幸運にも出逢うことができました。
これから長くお楽しみ頂きたいという想いからコンディションには特に厳正な基準を設けているのですが、時に ” 過去着用者の形跡 ” が魅力を絶大なほど強大に高めてくれることがあります。ゆえにその一着は諸々の判断基準がありながらも、とにかく ” 際どさ ” がとことん際立っており、その説得力は別格なのですが、いかんせん偶発的なものですので求めて出逢えるものではございませんでして。

 

 

 

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古い年代らしく、よりアノニマスにベクトルを向けたスタイル提案で、ボタンの刻印以外にそのメゾンと判別できる要素はございません。しかしながらテクスチャーからどうしても滲み出てしまう品位や風格は、やはりトップ・メゾンのそれでして。シルクを思わせるテクスチャーでありながら、その実、最上級な化繊で表現されたエレガンスは驚異的で、素材選びにも元々のバルカラーコートがもつ ” 雨具 ” という定義を表現しようとする実直なメゾンポリシーを感じさせてくれます。
なお、掲載画像で表現しておりますお色味は本体と異なります。ご覧頂くモニターによって差異はありますが、おそらくどのような環境下でも色味を表現しきれていないことでしょう。テクスチャーは基本的にマットでありながらも、光を受けると繊細な光沢感が出ますため、どのように撮っても本質を捉える事ができませんでした。シンプルに申し上げますとモスグリーンなのですが、その印象もお人によってや TPO によって微細に異なるかもしれません。その捉えきれない色調とテクスチャーが、とにかく驚異的な魅力です。

 

ドイツの写真家, アウグスト・ザンダーが作品において、社会から切り離された人々をラスト・ピープルと表現しているのですが、このコートを初めて目にした時、直観的にその表現を思い出しました。メゾン・ポリシーとそれを手掛けた職人の心意気、そして過去着用者の形跡によってラストピープルな際どさを要していますが、その真隣にはいつもエレガンスが居るかのような変則的すぎる存在感が楽しくて仕方ありませんでしたので、きっとこの一着と出逢った瞬間、私は異様なまでに破顔していたことでしょう。

 

 

 

 

 

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late 70s Hermes , oversized spring coat

捉えきれない色味とフォルムは、たっぷりとしたオーバーサイズで存分にお楽しみ頂けたらと思います。

 

 

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