アントワープ王立芸術学院から世に放たれた感性の中で、最も早く服飾史に名が刻まれるのは、私個人としてはマルタン・マルジェラではないかと思っています。
1989年、ファッションやスタイルの自由度が高く、良い意味で混沌としていた時代にコレクションデビューを果たした彼は ( 形式上は ) WOMENS のみで展開していた10年間で、数多の意欲的かつ傑作的なデザインを発表してきました。タトゥー , 人形 , フーシア , トアール , 仮縫い , フラット , 封筒など、すぐ思い出せる限りでもこの通りで、そのほとんどはデザインとして明確に視認でき、何よりはっきりと “ 形容 ” 出来る象徴性に溢れていました。
しかしながら1999年、いざ MENS のコレクションラインがスタートすると、それまでとは大きく異なる “ 非形容 ” の世界観が展開されます。形容しづらいながら1点1点濃密かつアイコニックなコレクションは、まるで彼自身のクローゼットを再現したかのような、 “ インスパイア・ソース ” に最大限の敬意を払ったかのような世界観でした。主観ですが、男性的な身体つきだった彼は、自分自身も着用する事が出来る MENS のクリエイションを心の底から純粋に楽しんでいたのではないかと思います。
そして、そこで発揮されるオーセンティックに対しての驚異的マニアック。
定番でありながら見事に高水準な美学で展開される彼の解釈には、 『 ブランドで選んでほしくない 』 『 単純に物として愛してほしい 』 という四点留めが表すメゾンの根幹が、最もシンプルに反映されているのではないでしょうか。
1999年、MENS の最初期からご紹介する一品はレザートラウザーズです。
これまでの服飾史を見渡しても、街中を見渡してもほとんど見かける事のないアイテムですが、彼は本当に愛していたよう。同時期に始まった HERMES という名のクリエイションフィールドで近しいアイテムが発表されていた事からも、想いの強さが伺えます。
これまでの常識,認識を覆すほどに興奮させてくれる服との出会いを、是非とも大切に。
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