80年代初頭 / Diary1117
28.3.2023

先日この一着に対して“ムッシュってこんなのも作ってたんだ”という御言葉を頂いたのですが、私はムッシュに対してそのように思ったことが無かった。何故ならばムッシュはなんでも作ってきたから。退任する少し前にキャリア40周年を記念して過去クリエイションを総集結させたドラマチックなショー(BGMはラヴェルのボレロ、最高)がスタジアム,スタッド・ドゥ・フランスで行われたのですが、終了後に幾人かから“あまり刺激的ではなかった”というコメントが寄せられました。しかしながらその理由はムッシュが後々のファッションデザイナーや人々のスタイルに強い影響を与え過ぎたがためにの過去クリエイションの数々が街中で当たり前のように見かけるほど人々の間に定着してしまったがためのものという、一見否定的なコメントながらいかにムッシュが偉大なファッションデザイナーであるかを物語ると言うエピソードがあるくらいですから。




 

しかしながらなんでも作ってきたムッシュにおいても今回の一着ほどデザインリソースが個性的と言うかユニークと言うかフェティッシュなことはほとんどないように思います。そもそもにおいて60-80年代のRive Gauche hommeが幻のような存在であることを,ウィメンズのクリエイションと比較すると出逢いの確立は1/100以下であることを,デザイナーズヴィンテージを長年専門的に収集してきた現地のコレクターですらその存在を認識していないほどであることを,当然ながら私も10年ほど前にとあるコレクターの下で出逢うまでその時代のRive Gauche hommeなんて存在することを一度も考えなかったことを差し置いて、単純明快にユニークなリソースを採用した一着なんです。

 

 



ザラリとドライなライトコットンを採用しアイヴォリーとカーマインでまとめたこちらのツートーンの腰丈ジャケットのモティーフはなんとテニスプレイ。テニスではなくテニスプレイです。サイズ表記が存在しないがためにフィッティング提案が読めないのですが、身幅のボリューム感に対して短めの袖丈バランスもプレイを考慮すると納得で、更に細身なアームと何よりボールが落ちないがための特殊なスラッシュポケット設計が紛れもなくテニスではなくテニスプレイであることを示す特出してユニークかつフェティッシュなリソースなのです。想像の域を出ませんが、本当にテニスプレイ用に製作されたと言われても不思議ではない構築なのです。その可能性がゼロではないのがそれこそなんでも作ってきたムッシュならではというもの。

 

 

 

 

 

New arrival,early80s Yves Saint Laurent Rive Gauche homme tennis jacket.

可愛くないですか?でも着用時のスタイルはダンディにも成れます。そこはやはり良質で上質なクリエイション特有の懐の深さで着用者の特性に合わせて印象を変化させられます。軽くてスポーティーで上品でシックでしっかりと個性的なコットンジャケット、春夏の羽織りの最適解の一つですね。

 

 

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