アンティークと私 / Diary1086
4.11.2022

弊店の一要素であるアンティークカルチャーはヨーロッパにおいてしっかりと市民権を得ておりますので石を蹴れば角を曲がればアンティークカルチャーにぶつかるなんてのはよく言ったもので、博物館にもあるしコレクターやマニアも沢山いるし実際に触れれば時代が異なるからこその圧倒的な職人技術や意匠などに猛烈心躍ります。ナポレオンの洋服とか凄まじかった。

そんなアンティークカルチャーですが弊店にとっては大変に難解な存在でして、一度バイイングの旅に出たら大量のアンティークピースに触れるのですが実際問題に連れて帰りたい出逢いというのは皆無に等しく、100着触れて1着出逢えれば良い方で数百着触れてもゼロ着なんてことも珍しくありません。デザインは面白いものが多いのですがサイズバランスがほんとうに独特で、肩が広すぎたり強過ぎたり身幅と袖丈のバランスが難しかったりと、そりゃ100年以上前の異国なんだから全然違って当然なのですが私が勝手に思うバランスの良い個体や現代的なバランスの個体がまぁ無いったら無い。あとはなんと言ってもコンディションです。全ての要素をクリアできたとてクラッシュがあったらダメージがあったら致命的な汚れがあったら選べませんし選びません。もちろんクラッシュやダメージをデザインとして昇華できることもありますが、稀。弊店にとってアンティークはリソースでも研究対象でも展示物でもなく実際に身に着けるファッションピースですので、スタイル性とコンディションの両立は必要不可欠なのです。

おかげで100着に1着出逢えれば幸運で出逢えなくて普通という切なき状況が整ってしまったのですが、それでもアンティークカルチャーの探訪は止められませんし止めません。だって楽しいんだものこういう品々に出逢えるから。

 

 

 



現代のいわゆるテーラードジャケットの原点であるフロックコートと現代のいわゆるテーラードジャケットの原点であるが形成される過程のスタイルであるサックコート。共になぜだか特に内側の要素性が少ない特出して軽い構築でして御陰様で生地の存在感が物凄いです。以前にとあるデザイナーが愚痴っていたのですが、これらアンティークの独特過ぎるテクスチャーをどうやったら再現できるか研究したところ最終的には織機から開発しなくてはいけないということになり、それだと初動で1着60万から100万弱になってしまうため諦めたそう。産業が発展しマシンの性能が上がり良質な生地がよりスピーディーに正確に生成できる昨今だからこそ、このマシンが未熟であった時代のスローで正確性が低い稚拙な技術が再現できない と。もろロストテクノロジーじゃんか。

しかしながら圧倒的な生地感であることは否めません。フロックコートはもっちりとしたウールの質感でサックコートは若干の光沢感あり。あとなんと言っても意匠性が、、、この美しさと格好良さはもう否定のしようがないもんなぁ。ちなみにフロックコートは胸ポケットもサイドポケットも無いですが、ある場所に左右で2箇所ポケットが存在します。無い理由も在る理由も論点は美意識。初めて知った時ズドンと痺れました。

 

 

 

 

 

New arrival,late1800s Belle Jardinier frock coat and early1900s French sack coat.

コートの形状だけどジャケットとして捉えるべき存在なフロックコートはおおよそ44サイズほどで、ジャケットの形状だけどハーフコートとして捉えるべき構築なサックコートはおおよそ46サイズほど。とはいえ計測値では測れない独特なバランスがあるそれぞれです。これらのアンティークジャケット系統でGOODコンディションかつMYサイズに出逢える確率って一生に一回あれば良いのではないかと思います。次回の旅でも1着は出逢えるよう、頑張れ福留。

 

 

SURR 福留

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