旅の終着 / Diary751
14.8.2019

私にとって “ 装う ” に関わる行動ならびに物質は、生業であると共に一個人として純粋に愉しむ存在ではありますが、かねてより続けさせて頂いております旅において出逢う御品たちは全て皆様方に御提案させて頂くための存在であるがゆえ私が愉しむことは一切ございませんでして、その道中は孤独と共にありますのでそれらを文字通りそのまま懐に納めることは正直に申しあげますと全くもって可能なのですが、私は自身の欲求を抑えることが極めて不得手で、一度でもそれを行ってしまうと “ この度の旅で出逢えた御品は、悲しいかな十点のみでした ” と偽りの御報告する日がやってくることは火を見るよりも明らかですので、もちろんそうしたくなる出逢いは挙げれば枚挙にいとまがありませんが一度でも行うと歯止めが効かなくなりますので、私にとって旅で出逢える御品たちは出逢えた瞬間に私のものに成らない運命にある, 恋に落ちた相手をどこかの誰かと結ぶために邁進する, 愛せば愛すほど抱き締めることが叶わない という、一体全体前世になにをしたらこう成るのだと自問自答せずにはいられない “ 業 ” と共にあるのが私の生業です。

もちろん弊社には社員購入制度も在るのですが、ヴィンテージやアンティークの一点ものに関しましては “ まず御客様に御覧頂いてから ” という基本規約があり、かつ愛すれば愛するほどその想いが伝わってしまうのか本当に本当に有難いことに旅立つその瞬間を傍らで見守らせて頂くことが常ですので、私はかねてよりこの生業において恋に落ちた際 “ それに近しい存在を探す ” という行動を繰り返しておりまして、高い再現感情を抱ける品と出逢えることもあれば思わず笑ってしまうほどに出逢えないこともあり、実質後者がほとんどなのですが、それとは別に “ 全く違う存在で落としどころを探す ” という行動もありまして、私にとって手首の装身具がそれに該当致しました。

ずっとずっと手首を彩る装身具, ブレスレットないしバングルが一つ欲しくて欲しくてたまりませんでしたが、旅で出逢う御品たちはどれも抱き締めることが叶わない。でも欲しい、叶わない、近しい存在には出逢えない を長年繰り返し、もういい加減に欲しいと想い続ける日々に疲れ果ててしまった私は銀座線の銀座駅, B7 出口のすぐに居を構えるかねてより敬愛する駆け込み寺の門をくぐったのが数年前のことで、現在においては設計から 81 年経ちますその寺にとって由緒正しき一本は御陰様で私の装いにおいて珍しいことにお声掛け頂く機会がある存在で、その頻度は年々上がっているようにも感じられますし、現実問題である重量の論点から身に着けなくなっていた一時期もありましたが、今や平日はもちろん意識的に腕時計を身に着けないことにしている休日においても時間を共に過ごす存在に成ってくれ、私にとって手首を彩る装身具の旅路は終わっているものの、これはお声掛けくださる御客様方にもお話しさせて頂くことがあるのですが私にとってのその装身具は 諦め から始まった旅の終着であり、もちろん物質として 120% 満足し心から愛しているものの、そうであると同時にこれは 妥協の存在 であると、心からの愛を胸に胸を張って言わせて頂いておりますのは、それら駆け込み寺, “ 餅は餅屋 ” 理論の数少ない例外 ( 他になにがあるでしょうか?機を視て考えてみます ) によるヴィンテージ ( 極々々稀に出逢えるアンティーク ) の存在と旅において時たま出逢う機会があるからであり、それを抱き締めることができないがゆえ寺へと駆け込み諦めと妥協を出発点としながらも紆余曲折を経て心から愛せる一本にて旅路を終わらせて今に至るっているからこそなおさら声を大にして心の中で叫びます。“ ヴィンテージの方が格好良い ”  と。

 

 

 

 

 

70s Hermes

私は本品を 81 年前に設計されたそれに次いでその寺における由緒正しき手首の装身具様式であると捉えておりますが、そもそも “ 男性 ” の “ 手首 ” を “ 彩る ” という条件下において特に不変的な印象を与えてくれ、どれだけ時が経とうと, 時代を経ようと, 時流が変わろうと男性の手首を彩った時に “ 格好良い ” という感情が一定の強さで永久に沸き立つであろうチェーンブレスレットという装飾存在においても特に王道的かつ匿名的なチェーンの形状であり、かつ根幹に駆け込み寺の原点性が濃密に潜んでおり、おおよそ半世紀という空気を吸い込み時間を経験した銀の素材表情がある一本ですので、手首を彩る装身具の旅路を終わらせたい迷えし御方はもちろん、手首の伴侶を更にもう一人とお探しな一夫多妻制の御方まで選択肢の一つとして御興味頂けましたら、是非に。

 

 

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