老舗による変則的な製作背景のコート / Diary638
7.12.2018

 


 

 

 

 

この度の新作である “ フランスにて製作された、それぞれに一人の注文主が居たコート ” 其の完結となる三着目を御披露目させていただく数ヶ月前に弊社で行われた商品検討会において熱視を浴びる事となった其の一着の変則的製作背景に対して疑いを隠せずに居たわたくしですが、ハウスプレートに刻まれたParisの印字と注文コード、そして一人の注文主の軌跡として記されるオーダータイム(年月日)の確固たる証拠を目の当たりしても尚,素直に受け入れることが困難であった理由を敢えて述べますと、今現在最も獲得困難と囁かれる同社フレンチビスポーク・コートである事、そのうえ当時得意とされた提案要素の主軸であるコットンギャバジンの組成,頭脳ど真ん中に仕入れていた情報を根底から覆す本品の御素材事実に尽き。総じて全的な裁量権を握る注文主とハウス基底に沿って要望を具現化するアルチザン=職人との応酬の末 Tweed / ツイード の精選が成された1956年10月11日に想いを馳せずにはいられず。

 

 

 

 

 

 

アイリッシュ・ツイードと憶われる重厚な平織りを視認できますが、油分を含んだような瑞々しいテクスチャーと謂いますか柔らかでコシのある強さは永い歳月をかけて行渡らせた油と湿気,其の非計画的な連続と丹念に向き合い続けた 主 と 衣 の厳然たる関係性,ゆえのエイジングと謂いきるにはどこか不十分で、あるいは毛羽立ちを許さない織り込みの細密さは丁寧なブラッシングとケアリングを習慣化しただけでは裏付けることができない根幹的な組成起因と憶い,率直かつシンプルに申し上げまして恐ろしいほど見事なツイードで御座います。幾重に同種類の御素材を嗜好されてきた方ならばおそらく御感取頂けるのではないかとも、僭越ながら憶う次第です。

 

 

正統的ベクトルをたっぷり注がれた御姿は例によってチェスターフィールドコートとして迎えられるわけですが、通常設置されない前立て裏のシガレットポケット(大きさから推定)が追加オーダーのように想起させる特異点と偽りのない純度を披露する三つ釦,比翼,シングルベント、そして潤沢なツイードを精選しながら外套=古き良きオーバーコートとしての意図を全的に感取しきれない明確点として同社においては極めてマニアックレンジなショートスタイルである事、さらにフィッティング・プロポーションとして全体的にコンパクトに抑えられていながらレングスを13cm程出せる余裕を保った御仕立てである事、以上から御身体が完全に仕上がる30代より以前、20代の内に注文された背景を推測する其れはファッション・モードとは遠いところに或るパーソナル性と洗練性と仏青年性/想像性の凝縮容姿のように憶い,完璧なる個人物を個人様に御譲りしたい,伝えて参りたい想いも褪せる事無く,ゆえに引き続きご提案したくてたまらない Bespoke piece であり French bespoke coat で御座います。おっと謂い忘れました、

 

最後に変則的な製作背景のコートを仕立てた老舗店を記しておきます。
皆様どうぞ宜しくお願い申し上げます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


Burberrys bespoke in Paris

 

 

 

 

 

 

 





1956.10.11 order, Burberrys french bespoke chesterfield coat

 

“ フランスにて製作された、それぞれに一人の注文主が居たコート ” より最後のエントリーと成ります本品 “ 老舗による変則的な製作背景のコート ” は明日 12/8 ( 土 ) 12:00 に御披露目させて頂きます。

 

 

 

 

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