この度の新作である “ フランスにて製作された、それぞれに一人の注文主が居たコート ” より明日御披露目させて頂きます一着目となる本品は 1963 年に御医者様の要望にて製作された逸品でして、注文仕立服という芳醇かつ特殊な背景に加えて Doctor という純真無垢な要素/要望が加わることで獲得した仕上がりは極地的なまでに我々にとってより強く御注目頂きたいとささやかに主張してしかるべき存在価値と相成ります。
御医者様 - 私は成ったことがありませんしきっと来世も成ることは無いであろう世界のお方ですが、光栄ながらこの生業において触れ合わせて頂く機会があるうえでの浅はかな印象と致しましては、極めて極めて大変なお仕事, もちろん職業に貴賤無しではありますが、御医者様方がいわゆる “ 触れ扱われる ” 事柄はとても推し量れるものではございませんので、私なんぞが大変なお仕事と申しあげるのも失礼に値するほどに想いますが、しかしながら間違いないのは社会にしっかりと貢献される, 尊敬されてしかるべき, “ 先生 ” という敬称に一寸の曇りも無く値する方々 に想います。本当にいつもお世話になっております。お酒飲み過ぎないように気を付けます、すみません。
その 私なんぞが推し量れない大変さ を想像させてくれる要素がこちらのビスポークコートにも潜んでおり、まず始めがベンツの深さでして、皆様方も御存知の通り古き乗馬用のコートなどは稼働目的として通常よりも深いセンターベンツが設計されるのですが、こちらもそれらと同じく深いそれが配置しており、きっと着用時にも即座に従事・対応を目的としたそれだったのではないかと想像します。更に特徴的なのは袖の取り付けでして、この点は私が服創りを学んでいないがゆえ抽象的な表現となってしまい恐縮なのですが、およそ 1930 年代頃以降の仕立服は基本的に “ 身頃から袖が生えている / 身頃から袖が延長している ” ように結合されているのに対して、それ以前, 主に 1900 年代初頭まで仕立ては “ 身頃に対して袖が独立している / 身頃 に対して少々袖が被さる形 ” の結合であるとかねてより想っておりまして、前者が身頃に対して袖が “ シュッ ” だとすると後者が “ ガシャコン ” と申しますか、この内容を可視化するのが初めてなので大変に歯がゆいのですがそのように感じておりまして、本品もその様式にて構築されているのですが、この論点は美意識よりも機能性であろうにも関わらず、私はこの構築形式の結果に極めて強い美しさ, 純粋な目的性ならではの輝きを感じ強烈に惹かれます。
なにより強烈な印象を残すのは袖を通し身体に添わせた時の得も言われぬ心地良さ。問答無用に包み込まれると申しますかコートそのものに優しく抱き締められると申しますか、その絶頂感は言葉で表現しきることが叶いませんで、それはやはり注文服, ビスポークであるがゆえの職人技術によるものが大きいでしょう。私はビスポーク至上主義者ではなく既製服も同等に愛しておりますが、この直感的な問答無用感と絶頂感はビスポークならではの感情に想います。またこれも想像の域を出ませんが、このコートを抱き締め返すとこの美しく青みがかったヘリンボーンはウールだけではなくロウシルクを織り交ぜた組成なのではないかと想わずにはいられません。着用絶頂感と併せましてこの点も是非実物にて御体感頂きたいです。
1963s French bespoke chesterfield coat for doctor
最期の特異性であるポケットを排除された胸部ですが、この点は純粋に注文主の好みだったのではないかと想像致します。前述の要素とこの無機質さを踏まえまして御身体への寄り添いによって, 寄り添わないことでの唯一無二な結果によって, 嗅覚のみによって等で御判断頂き、御医者様という注文主と時代を経て現代のお姿にして頂けましたら幸いです。
“ フランスにて製作された、それぞれに一人の注文主が居たコート ” からの一着目となります本品 “ 社会貢献性の高い資格所有者が注文主のコート ” は明日 12/6 ( 木 ) 12:00 に御披露目させて頂きます。
SURR by LAILA 福留
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